スリーアウトになる前に。
梅雨なのに明るい空。

これから本格的に雨が多くなるし、夏場は走り回るのきつそうだし、また来るなんてあるかな。

向こうは今さら私に女性として興味はなさそうで、ただのサッカー要員として呼ばれたんだよね。

真奈ちゃんかぁ、若くて元気でサッカー好き。直接比べられたわけでもないのに、地味に傷ついてるなぁ、私。



なんとなく空を見上げていたら、軽快な足音と共に「追いついた。相変わらず足早いっすね」と声をかけられた。

「沢田くん、どうしたの? あ、私何か忘れた?」

「これ」

差し出されたのは、数本重なった細いゴールドチェーン。あ、こないだしてたブレスレット。

「洗面所に置いてありましたよ」

「ごめん、忘れたことすら気づいてなかった。ありがとう」

「やっぱりそっちかー」

沢田くんは大げさにうなだれながら、私の手にブレスレットを乗せる。そっちって?

「わざとかなと一瞬期待したんですけどね。まあいいや、なんか食いに行きますか」

「え? 飲みに行くんじゃないの?」

「飲みたいですか? 俺がよく行くスポーツバー行きます?」

よくわからないうちに、彼の最寄駅の近くにあるというバーに行くことになった。

これが超強引ってやつ? みんなと飲みに行くみたいだったのに抜けて来ていいわけ?


自分ちの近くで飲もうとかさ、普通に下心ありの誘いかと思っちゃうけど、だったらこないださっさと手を出してるよね?

どういうつもりか聞きたいのに、なんでもないような振りをしている。


昔と立場逆転してるよね、これ。私がドキドキしてるとか、気づかれちゃってはいないよね。

動揺してるのを悟られたくなくて、目をそらした先にあったのは吊革につかまる腕のきれいな筋肉。落ち着くためにもう一度視線の先を変えなくちゃならなかった。

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