スリーアウトになる前に。
連れて来てもらったスポーツバーは、店の中央の大画面の他にもカウンターにいくつかタブレットが置いてあり、動画サービスで各種スポーツ中継が見られるようになっていた。

「楽しいね、これ」

「でしょ」

ちょっと偉そうに微笑みかけられ、こんな感じだったっけ? なんか補正かかってない?とうろたえる。

自分で契約していつでも見られたら社会生活に支障が出そうだということで、沢田くんはここで見ることにしてるんだって。

「亜由美さんも結構観る人でしたよね、女の人では珍しいくらい」

「うん、競技スポーツっていいよね、あの高みを目指す姿勢がね。凡人の私にも夢を見させてくれる」

「ですね。まあ俺は凡人なりのプレイも楽しいですけど」

今日みたいな混合でなく男性だけでやるときは、もうちょっと本気の対外試合をするそうだ。


「あのチーム、1人で作ったの? いかにも沢田くんのチームって感じだった」

「いや全然。後から入っただけですけど、俺が声かけたメンバーが定着してるからかな」

「ふーん、リーダーシップ取れる男に成長したねぇ」

あえてにこやかに上から言ってみる。ほんとかっこよくなっちゃって。嫌だな、男って。



「亜由美さんに刷り込まれたようなもんですよ、人を動かせる男にならなきゃダメだとか」

「私そんなこと言ってた?」

「言ってましたよ、好きなタイプとか」

そうなんだ。確かにあの頃は、相手の好意をいいことに好き勝手言ってたかもなぁ。若いってバカだなぁ。

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