スリーアウトになる前に。
「おはよう」

「おはようございます」

お互い冷静に、朝の挨拶をする。

「飲み過ぎちゃったよね、ごめんね?」

「いや、俺の方こそ。えっと、ちょっと、シャワー浴びてきます。いや、亜由美さん先に使います?」

「ううん、お先にどうぞ」

ぎこちない会話の後、沢田くんは起き上がってさっさとバスルームへ消えて行った。

水音が聞こえ始めて、ふーっとため息をつく。

うーん、色気のない状況だ。

ありがちなワンピースでなく、あえてとろみ素材のトップスとペンシルスカートでこなれ感を出したはずのコーディネートが、こうなったらただのヨレヨレ普段着だ。これで電車に乗るの嫌だなと思う程度にはひどい。



シャワーから出た沢田くんは、上半身裸でバスタオルをかけた状態で戻ってきて、目のやり場に微妙に困る。

そのまま私に背を向けてクローゼットを開けている。きれいな筋肉。思わず背中を眺めてから、まずいまずいと目をそらした。

「亜由美さん、よかったらこれ使ってください」

そう言って差し出されたのは、Tシャツにハーフパンツ、それからスチーマー?

「ありがとう」

「ハンガー必要だったら洗面所にあるんで」

几帳面だなぁ。そうそう、この人はこういうところがあった。大騒ぎするくせにちょっと繊細っていうか。

気が利くけれど、男としてはちょっと頼りないなとか思ってたのにな。でも頼りになるはずの男っぽい男が意外と土壇場で女々しかったなんて経験もした今、ちょっと見方は違う。

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