スリーアウトになる前に。
シャワーを借りて、洗面所で服のしわを伸ばしながら、でも向こうも見方は違うってわけだよねと疲れがどっと出たような気持ちに襲われる。

二人で飲んで、家までついてきて、その状況で何もないっていうのは、いわゆる『対象外』とかさ、迂闊に手を出して結婚とか迫られたら困るとかさ、そういうことでしょ。

単に懐かしくて誘ってみたけど「今更ないな、三十路の女とか」ってことだよね。もしかして「軽い女になっちゃって幻滅したな」とか思われてたりして?

どういう状況で部屋まで上がりこんだのか、覚えてないのが怖い。



はぁ、だっさいな、私。




メイクを何とかみられる程度に直して、借りた服もたたんで差し出しながら、

「ごめん、午後から出かける用事があるの忘れてたの。急がないと」

と話もほとんどせず慌てて帰った。さすがにね、恥の上塗りはできません。



飲みになんて行かなければ、懐かしい思い出のままだったのに、と反省していたその夜に連絡が来た。

【来週土曜は1時集合です。今回屋根付きなので雨天決行。シューズとかありますか?】

何かなこれ。

【シューズって?】

【フットサルは久しぶりって話でしたよね】

私もやるとか言ったってこと? 覚えてないよ。でも言えない。酔って記憶飛んでるとか。

【靴は平気。場所詳しく教えて?】

行けばなんとかなるよね。

そもそも話したことを覚えてないって怖いなと今更思う。沢田くんのこの態度からして、何か妙なことを言ったりはしてない気はするけど。


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