公爵様の最愛なる悪役花嫁~旦那様の溺愛から逃げられません~

私の表情が曇るのを見た兵士は、慌てたように言う。


「欲しがってたブローチは、カメオじゃなかった?」

「カメオよ。でもこれじゃないわ。ブローチの周囲が宝石で飾られている、もっと立派なものがよかった。仕方ないからこれももらってあげるけど、次はちゃんと私の欲しいものをお願いね」


文句がありそうに眉間に皺を寄せる彼を、私は真顔でじっと見つめる。

すると彼は気圧されたようにたじろいで、それからおずおずと、「それじゃあ今回のご褒美は、なし?」と聞くから、不快感が込み上げた。


嫌らしい男ね……。

触りたくもないけれど、なにも与えないで帰して、二度と贈り物を持ってこないのも困るから、仕方ないわね。


被っている白い木綿の頭巾を外すと、プラチナブロンドの肩下までの髪が風になびいた。

この髪や、青く澄んだ大きな瞳や、白く滑らかな肌を男たちは手に入れたくて、こうして私に貢いでくれる。

初めて言い寄られた十五歳の頃は、仕事の邪魔になるし、見返りを求められるのが苦痛だったけど、十八になった今では慣れたものだ。


< 2 / 363 >

この作品をシェア

pagetop