同居人は国民的アイドル




…………ダンスだ。




廉くんの手足の動きを見て、そう確信した。




大きな音をたてないように軽く動いているけど、流れるようなその動きから廉くんのダンスの上手さが伝わってきて。





…………そういえば、どこかで聞いたことがある気がする。




廉くん以外のCoolZのメンバーは、確かみんなダンス経験者だったはずだ。




それでも廉くんは、経験者に囲まれても全く引けを取らずにセンターで踊り切っている。




純粋なファンだった頃の私はそんな廉くんを見て、やっぱり何でもできる人だな、って思ってたけど。




目の前の廉くんをじっと見つめる。




決して何でもできるわけじゃない。


ちゃんと努力してついてきた結果なんだ。




それは、目の前にいる廉くんを見れば明らかだった。




私が見ていることにも気づかず、廉くんは未だに踊り続けている。




その様子を見て、私はなぜか胸の奥の方がキュッと締め付けられたような気がした。




そう、まるで…………

廉くんに初めて下の名前を呼ばれた時のように。





< 87 / 233 >

この作品をシェア

pagetop