無意確認生命体
5月29日(土)

26.


「え~とぉ~、日本史は54ページまでが範囲だから……プリントは……ここまでか……」

「うぉ~い! 何やってんだ! 助けろそこのお馬鹿娘~! ――あ、ほらほら! え? このおもちゃ? はい! がらがらがら~」

「で、……現国は一日目だから明日勝負かけて……」

「こらー! 聞いてんのか美智ー! ちょっと! 有樹《ゆうき》ちゃん泣き出しちゃっふぇ、ひ、ひらい! やめへ! うーひひゃん! ひらい、ひらい!」

「あー! ちょっと後にして。多分お腹でも減ったんでしょ。しぶちん、そのちょっぴりサイズが貧弱なのでいいから、吸わしてやっといて」

「うっはひ! いだっ! ……くぅ。ゆ、有樹ちゃん。おもちゃはこっちだよ。私のほっぺは引っ張らないでね~? ――そんなの出るわけないでしょ! ってゆうか余計なお世話だ馬鹿ッ! ――あ、あ、あ! 有樹ちゃん、落ち着いて! 駄目だって! ちょっと美智! 美智ィーッ!」

「……んもー。しょうがないなぁ。まったく、しぶちん、キミはあたしがいないとなんにも出来んのかネ」

「黙れこの育児放棄野郎! さっきからアンタが私に任せっきりなんでしょうが! これじゃ話が違うぞ!」

「失敬な! これは放任主義と言ってもらいたい!」

「もういいから! 早くミルク作ってきて! 誰かついててあげないとすっごい泣いちゃうんだよ。私、ひとりで抱いたまま作るなんて無理だから!」

「へいへ~い。――くっくっく。いいママさんになれそうですなぁ、しぶちん」

そう言ってやっとこさ立ち上がり、台所へ消えていくネグレクトギャル。

くっそ~! こいつは~。

人の気も知らないで……。

< 100 / 196 >

この作品をシェア

pagetop