海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
相葉先生はプッと笑いながら


「ここは遊びに来る場所じゃないだろ。」

そう、呆れ気味で答えた。


「だって、私は全然来る用事がないんだもん。」


平然とそう答えた瑞穂は、ワープロはまぁまぁだけど簿記が苦手だ。


本当のところ、

『河原よりもこっちの方が勉強を頑張る必要があるのでは…。』

と、相葉先生は思っていたのかもしれない。


そして相葉先生が“やれやれ”と言わんばかりの表情で私を見つめた時、先生の様子につられて私も“やれやれ”と肩をすくめてみせた。


こういう時、自分が少しだけ特別になれたような気持ちになれた。


込み上げる喜びを感じながら、

『先生、期待しちゃうよ…。』

心の中で、そう相葉先生に訴えかけた時、


「で、珍しく何しに来たんだ?」

と、先生が瑞穂にいじわるっぽく問い掛けた。


「あぁ、用事は私じゃなくてさくなの。」

そう言って、瑞穂は私を指差す。


『いきなり!?』

心の準備が出来ていなかった私は軽い戸惑いを感じながらも、シュークリームが入った紙バッグを握り締めて、一歩、相葉先生に近付いた。


「先生、いつもお世話になっているお礼です。シュークリームを作ったの。」

そう言って、私は先生の机の上にバッグを置いた。


「わざわざありがとう。気にしなくて良かったのに。」

そう言いながら、相葉先生はにこやかに受け取ってくれた。


「それ、超おいしいから!」

そんな瑞穂のすすめに先生は、


「へぇ。」

と答えながら、シュークリームの包みをつまんで中を覗いた。


そして顔をあげると、

「どうもありがとな。」

そう言って、私にもう一度お礼の言葉をくれた。
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