海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
自動車学校から車で約10分の所にある、二階建ての一軒家の前で、


ハザードランプをつけて停車した青山先生が、車から降りて私の方に近付いてきた。


「そこに車入れて。」


そう言って青山先生が指を指した所は、そのお宅の玄関前。


その家を見た時、“青山先生は実家に住んでいる”という事を感じた。



「はい、分かりました。」


青山先生に言われるがまま、指示された場所に車を停めた私は、


『もしもタイミング悪く、ご両親が出てきたらどうしよう。』


と、内心とてもハラハラしながら自分の車を降りたけれど、


そんな事が起こる前に、


「乗って。」


すぐに青山先生に呼ばれて、誰にも会う事無く、だけどドキドキだけは残したまま、青山先生の車に乗り込んだ。


「お邪魔します。」


一応、挨拶をしてシートに座った私に、


「どうぞ。さぁ、飯に行こう!回転寿司でもいいかな?近くにあるんだけど。」


と、青山先生は答えた。


「あ、はい。」


そう言って、私がコクンと頷くと、


「よしっ。」


青山先生は、進行方向に向かって車を発進させた。


私は青山先生の家に着いてからというもの、


普段に比べて先生の笑顔が少なくなっていたような気がした。


そんな不安めいたものを感じつつ、


青山先生の車の助手席に乗っている事に、ますますドキドキしていた。


教習で何回も青山先生と車に乗ったけれど、青山先生個人の車で、しかも助手席という事が、間違いなくいつもとは違う雰囲気にさせていたからだろう。



『何か話さないと…。』


ほんの少しでも沈黙になるのが怖くて、発進する直前に私は口を開いた。
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