海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「先生って実家に住んでるんですか?」

「そうだよ。」


青山先生は、まっすぐ前を見たまま答えた。


「先生って兄弟とかいるんですか?」


青山先生のプライベートな部分が知りたいと思っていた私は、質問を続けていく。


「うん、弟がいる。この街にいないから一緒には住んでいないけど。親父と母さんとばあちゃんの、4人で住んでるんだ。」


私が「ふーん」と相槌を打つと、


「河原さんは?兄弟いるの?」

逆に質問されて、


「私は妹がいます。一緒に住んでるよ。」

「じゃあ俺と同じで長男、長女だな。」


そんな会話をしている内に、あっという間にお店に到着した。


「腹減ったー。行こう!」

「はいっ。」


青山先生の後を追うように車を降りてお店に入ると、店員さんに案内されて、私達はカウンター席に座った。


先生から手渡されたおしぼりで手を拭いている内に、


「いただきます。」


青山先生は早速回ってきたお寿司のお皿に手を伸ばし、パクパクと食べ始めた。


私もお茶をゴクンと一口飲んでから、一つのお皿を取った。


正直な所、私は家で夕飯を済ませてしまったので、あまりお腹が空いていなかった。



「俺、寿司すげー久しぶり。」


そう言いながら、パクパクとお寿司を頬張る青山先生がなんだか少しだけ可愛らしく見える。


そしてまた、


『何か話さなきゃ…。』


その焦りに駆られてばかりの私は全く食事どころではなく、


前回はどれ程瑞穂に助けられていたのかを思い知らされた気がしていた。



青山先生はなかなか箸の進まない私を見て、


「寿司、あまり好きじゃなかった?」


“あれっ?”という感じで私に問い掛けた。


「あ、いえ…。実は、家で普通に夕飯を食べちゃったんです。」

申し訳ない気持ちで答えると、


「あっ、そうだったのかぁ。じゃあ、もし何か食べれそうなものがあったら食べたらいいよ。」


そんな青山先生の優しい言葉に、


「はい…。」


そう言って、ゆっくりとつまめそうなフライドポテトのお皿を取った。
< 261 / 446 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop