海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
パソコン教室の中にツカツカと入ってくる私を、沢山の先輩達が見ている。


視線が痛かった。


その視線に耐え切れず、私はすぐに相葉先生の姿を探すと、準備室にいるのが見えた。


「相葉先生。」


教室からそのまま準備室に入り、私が先生に声をかけると、


「うん?」


何かをペラペラとめくりながら、相葉先生は振り返った。


「先生、うちのワープロを持ってきたんだけど、どこで使ったらいいかなぁ?」


そう訊ねた私の顔と、手にしているワープロをチラッと見てから


「…じゃあここにするか。」


と、相葉先生は私に手招きしながら教室の方に歩いて行った。


私は慌てて相葉先生の後に続いて教室に戻ると、先生が“ここにするか”と言った場所は、パソコン教室用に作られた長い教卓の一番端っこだった。


要するに、私がそこに座れば、パソコンに向かって座る沢山の先輩達と向かい合わせになるので、嫌でも目立つ場所だった。


「…」


一瞬言葉を失うくらい嫌だったけれど、どう考えてもここしか使えそうな場所がない。


「…じゃあ、ここを使わせてもらいます。」


どうしようも無くて、結局、私は素直に受け入れたのだった。


そしてワープロを長い教卓の端に置くと、先生がコードをコンセントに繋げてくれたので、


「ありがとうございます。」


ペコリと会釈をしながらお礼を言うと、先生は


「うん。」


と軽く返事をして、また準備室に戻っていった。
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