海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「私、今でも相葉先生が好きなんです。1年かけて忘れようとしたけれど、やっぱりそれでも好きなんです。なのにその事を知って…ショックで…私…。」


言い終わる頃には、大粒の涙がポロポロと目から零れ落ちていた。


涙を止めようとしたけれど、止まる訳もなく、それ以上の言葉を続ける事も出来なかった。


社内に私と松井さんだけで本当に良かった、と心から思った。



「河原…。」


松井さんは心配そうな声で私を呼びかけ、ティッシュを数枚手渡してくれた。


「私、どうしたら…。」


手渡されたティッシュで目頭を押さえながら松井さんに問い掛けると、


返すにふさわしい言葉がなかなか見つからない様子の松井さんは、


「…ごめん、そんなに本気だったなんて思わなかった…。」


そう一言、本心を言った。



私も他の生徒と同じように、単なるファン程度の気持ちだと思われていたのだろう。


『先生の事を本気で好きだと知ったら、きっと引くんだろうな。』


そう思っていたからこそ、大抵の場合、私が相葉先生を好きな事は隠してきた。


在学中から、知っていたのは本当に仲の良い友達だけだった。


今でも好きだなんて、尚更言えない事だった。



『やっぱり言うんじゃなかった。』


そう思った時、



「辛いと思うけど…。」

「…?」


私は鼻をグスグスいわせながら、真っ赤な目で松井さんを見つめた。


松井さんは残念そうな表情で、


「ありきたりな事しか言えなくて申し訳ないけど、いつか思い出になる日がくるよ、きっと…。」


そう言って、ぼんやりと視線を机に落とし、


「そういう日が来るのを、待つしかないんじゃないかな…。」


と、一言呟いた。



「そうですよね…。」


私は新たに数枚のティッシュを取ると、目頭にあてた。


熱い涙が幾重にも重なったティッシュに染み込んでいく。



『今の苦しい時間を乗り越えるしかないんだ。』


そう、思っていた。
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