海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
久々に入った電話ボックスから見た公園の風景は、本当に懐かしくて一瞬で私を高校時代に引き戻した。


この場所は、私にとって特別な場所だった。


パソコン教室の準備室と同じ位、色んな事があった場所の一つだから。


ここにいるだけで、沢山の記憶が蘇えってくる。



『電話をする位なら、思い切って相葉先生の家に行ってしまえばいいのに。』


そう、思われるかもしれないけれど、そんな勇気なんて私は少しも持ち合わせていなかった。


相葉先生の顔を見ながら“結婚おめでとう”なんて言える自信は全く無かったし、


むしろ、相葉先生を目の前にしてしまったら、


“それでもやっぱり好きなんです”


そんな風に悪あがきをしてしまうかもしれない。


それは相葉先生を困らせるし、何より、私自身を更に深く傷つける事になるだろう。


私はもうこれ以上、傷つきたくなかったけれど、どうする事が自分を一番傷つけずに済むかは分からなかった。


どんな選択をしても傷つく結果になるような、そんな不安がまとわりついてて、


電話ボックスの中で受話器を握り締めている今も、このまま逃げ出したくなっている気持ちに負けてしまいそうだった。


それでも、


『それじゃ前に進めない。』


そう思ったから…



私は自分を奮い立たせて、高校時代に何度もかけた相葉先生の電話番号通りにボタンを押した。


卒業してから一度も電話をかけていなかったのに、ちゃんと覚えている自分に気付いて少しだけ驚いた。



プルルルル…


プルルルル…


プルルルル…



電話の呼び出し音が鳴る度に、私の心臓はドクン、ドクンと大きく高鳴り、受話器を握る手には自然と力がこもった。
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