海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
ある土曜日の夕方、私は家のリビングに置いてあった車の鍵を手に取り、


「ちょっと出かけてくる。」


そう言って、家を出た。



お母さんは特に行き先を聞くわけでもなく、


「行ってらっしゃい。」


と、いつも通りに私を見送ってくれた。



車を走らせて私が向かった先は、相葉先生のアパート近くにある公園。


そこにある電話ボックスに行こうと思っていた。


忘れもしない、雨の日に相葉先生が来てくれた場所。


そこを選んだのは、相葉先生に会える事を期待していたわけじゃなくて、


相葉先生と最後に話す場所として、一番ふさわしい場所だと思っただけ。


自分にとって思い出深い場所で、この恋を終わらせようと思ったんだ―…



車を走らせて数分で目的の公園に到着すると、色んな想いが詰まっている場所だったせいか、ここに来ただけで既に緊張し始めていた。



電話ボックスの前で停車し、車から降りる前に車内から相葉先生のアパートを見てみると、駐車場には相葉先生の車が停まっていて、運良く大崎先生の車は無かった。


『せめて今だけは、相葉先生一人でいて欲しい。』


そう思っていたから、私はとてもほっとしていた。


ほっとしたのだけれど、それでも私は、


『やっぱり引き返そう。』


そんな弱気な気持ちになった。



『気持ちの整理なんてつけずに、いつまでも好きでいた方が楽なのかもしれない。』とか、


『電話を切った後、後悔するのかもしれない。』という不安があったからだ。



だけど、


『それじゃあ何も変わらない。』


そう思い直した私は、意を決して車を降りると電話ボックスの中に入った。
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