海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「あは、じゃないでしょ。なんか前よりやつれたよ?あれから何かあったの?」


瑞穂が言う“あれから”っていうのは、相葉先生の結婚の事を話した日の事だ。


“あれから”何かあったのかと聞かれれば、



「うん…ちょっと…。」



“あった”と答える事になるだろう。



「…どうしたの?」

「うん…。」


何となく瑞穂と目を合わせられないまま、テーブルを挟んで向かいに座る瑞穂に、お茶を入れたグラスを差し出した。


「ありがとう。」


そう言ってグラスを受け取った瑞穂は、私をじーっと見つめたまま、言葉の続きを待っている。



「どう致しまして…。」


自分の部屋なのに居心地の悪さを感じて、私はヘラヘラと笑っていた。



「何があったの?」


“早く!”という雰囲気を漂わせてもう一度問い掛けてきた瑞穂に、私はようやく口を開いた。



「この前、相葉先生に電話したんだ…。」


私は気持ちが落ち着かなくて、自分の目の前に置いたグラスを指で撫でながら話を続けた。


「先生、元気そうだった。私の事も覚えていてくれた。」


「もう忘れてたらショックだよね!…まぁいいや。それで?」


瑞穂は冗談っぽく相槌を打ちながら、自分が持ってきたチョコレートのお菓子の袋を開けた。


それを一つ摘まんで口に入れると、


「さくも食べなっ。」


そう言って、袋を私の方に差し出した。



「ありがとう。」


ふふふ、と笑いながら私も一つ取って、口の中に入れた。


チョコレートの甘さがじんわりと口の中に広がる。


とても優しい味に感じた。
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