海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「で?」


瑞穂が話の続きを聞きたそうに私を見つめた。



「先生が結婚するっていう事を確かめたの。やっぱり本当だった…。」


瑞穂はどことなく神妙な表情を浮かべながら、無言で頷いた。



「それが事実だって覚悟していたけれど、やっぱりすごくショックだった。だけど、それでもちゃんと祝福しなくちゃいけないって思ったんだ。私はその為に電話をしたの。」


「うん…。」


「おめでとうってちゃんと言えたよ。」


私は笑いながらも、目にうっすらと涙が浮かんだ。


「で、幸せになってねって。約束だからねって言ったんだ…。」


「そっか…。」


「だってね、先生が幸せになってくれないと、私の想いが浮かばれないもんねぇ。」


私は肩をすくめて笑った。


だけどすぐに視線をテーブルに落とし、お菓子の包み紙を指で触りながら、


「幸せになってくれなきゃ諦めきれないっていうか…困るっていうか…うまく言えないんだけど。」


そう言って、口元に微かな微笑を浮かべた。


「先生が結婚を決めたんだから、幸せになって欲しいって思うんだ。それは本当なんだけど…それでもやっぱり心のどこかでは望んでないんだよね。結婚して欲しくないって気持ちがあるもん…。」


「そりゃそうだよ…。」


ふと顔を上げると、瑞穂もぼんやりと視線を落としていた。


まるで、私につられているようだった。



「先生ね、“河原も幸せになれ”って言うんだよ?でも、私の幸せって何なんだろ。」


そう言った途端、とうとう私の目から涙が零れ落ちてしまった。


自分が口にした疑問が、ずっと不安に感じていた事だったからだと思う。


その問いに、瑞穂は無言だった。


何も言えなくて当然だろう。


そんな事は、誰にも分からないのだから。
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