海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
「相葉先生が結婚しちゃうのに、私の幸せってあるのかな。何なんだろ。なんかよく分かんない…。」


ティッシュで目元を押さえながら消えそうな程小さな声で呟くと、それから少しの間、私も瑞穂も何かを考え込むように黙りこくってしまった。



「…多分、私は相葉先生以上に好きになれる人なんていないと思う。もう誰も好きになれないと思う。私の幸せは…もう無いも同然だと思う…。」


「そんな事ないよ…。」


瑞穂は困ったように私を見つめていたけれど、私は続けた。


「相葉先生に“おめでとう”って言えたら、少しはスッキリ出来るかなって思ったんだ。だけど今は、こんな生活がこの先も続くんだってウンザリしてる…。」


初めて言った本心だったけれど、言い終えると私も瑞穂も口を噤んでしまい、私達の周りには再び沈黙が訪れた。





「ねぇ…。」


瑞穂の呼びかけに、


「うん?」


私は俯いていた顔を上げた。



「さく…まさか変なこと考えてないよね。」


「え?」


「死にたい、とか思ってないよね…?」


瑞穂の真剣な眼差しとその言葉に、すぐに返事が出来ずに言葉が詰まった。


無言の私に瑞穂はもう一度、



「…思ってるの?」


そう言って、私の事をじっと見つめた。


その瞳には、怖気づいてしまいそうな程しっかりとした光を湛えているように感じた。



私は…



「…思ったよ。だけど今は思ってない。」




本当の事が言えなかった―…


本当は、毎日毎日“死にたい”って思ってる。


でも“死にたい”なんて言ったら、きっと瑞穂は怒りながら泣くだろう。



そんなの…

私にだって分かるから―…



「…本当に?」


疑いの表情を見せる瑞穂に、



「本当だよ。」


私は嘘をついた。
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