海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
表に出ると、起きた時に晴れていると感じていた空は、少しずつ曇り始めていた。



『これでいい。』


私はそう思った。


晴れているよりも、曇り空の方が今の私にはふさわしい気がしたからだ。




車に乗り込み、私はいつものように走り出した。


向かった先は海。


一番近い海はここから1時間位で着く。


そこにしようと前から決めていた。



車を運転しながら、半ばぼんやりとした状態で考えていた。



相葉先生は今日結婚する。


生きていても、私の想いが通じる日は一生訪れないんだ。


私が死んだら、先生はずっと私の事を忘れないでいてくれるかな。


それ以前に、私が死んだ事を知る日が来るのだろうか。


知られなかったら寂しいな―…



…そんな事を思いながら車を走らせていると、海に近づくにつれて空はどんどん曇っていき、


あともう少しで到着するっていう頃には、大粒の雪が視界を妨げるように降り出していた。




『もうすぐ楽になれる…。』




ようやく海に到着し、私は海岸を見下ろす位置にある駐車場に車を止めた。


大粒の雪は相変わらず降り続いている。


ふわふわで、冷たくて、私をすぐに覆い隠してくれそうな雪だった。



車を降りて海岸を見渡すと、冬なのに凍っていない海面が、波でゆらゆらと揺れているのが遠目でも分かった。


駐車場は防波堤の代わりにもなっていて、海岸までは斜面になっている。


海岸に下りる為にはその坂を下らなければならないのだけれど、見たところ、最初に車の中から見た時よりも雪は積もっていない気がした。


私がその坂に1歩、足を踏み入れてみると、ザクッと音を立てて足が膝辺りまで雪に埋まった。


「うわっ…!」


予想外に深く足が埋まってよろけた私は、慌てて体を捻りながら体勢を整えた。



体勢を整えてその場で静止した私は、


『これから死のうとしている自分が、転びそうになった位で慌てるなんて馬鹿みたいだ。』


と、呆れて笑えた。
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