海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
ピンポーン…


チャイムが鳴り、


『きっと瑞穂だろう』


そう思いながら急いで玄関ドアを開けると、


「さくー。」


玄関の向こうに立っていたのは、私の予想通りの人だった。


サーモンピンクのダッフルコートに身を包んで、ニコニコしている瑞穂だ。



「いらっしゃい。寒いから早く入って。」


そう言って家の中に招き入れると、



「お邪魔しまーす。」


瑞穂はお気に入りのベージュのブーツを脱ぐと、リビングにいる母にも聞こえるように挨拶をしてから2階の私の部屋に入った。



「今日はごめんね、付き合わせて。」


テーブルを挟んで向かい合わせに座りながら、申し訳なさそうに瑞穂が言った。


「ううん、大丈夫だよ。で?隆二さんって人の事が好きなの?」


私は小声で“いただきます”と言うと、瑞穂が持ってきてくれたお茶をグラスに注いで、瑞穂の前に差し出した。


そんな私に向かって瑞穂は“うんうん”と頷きながら、


「んー…そういう訳じゃないんだけど、気になるかな。カッコイイの。坊主頭で見た目はちょっと悪そうなの。」


と、答えた。


「へぇ、どこで知り合ったの?」


私の質問に、恥ずかしそうな表情を浮かべてお茶を一口飲んだ瑞穂が、


「この前、専門学校の時の友達と遊んでた時にナンパされたの。」


そう言って、照れながら笑っている。



「そうなんだ。」


私がさほど驚かなかったのは、密かにそんな気がしていたからだ。


今までにも“ナンパで知り合った男の子と遊んだ”っていう話を何度か聞いた事があったし、

実際にその男の子達と会った事があるせいか、普通に納得していた。
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