海に降る恋 〜先生と私のキセキ〜
『検定の結果が出たら真っ先に相葉先生に会いに行こう。』

私は前からそう思っていた。


もし不合格だったとしても相葉先生にお礼が言いたかったし、実際に合格すると、その気持ちは尚の事だった。

それ位、先生には力になってもらったのだ。


途中、たまたますれ違った口うるさい先生に

「廊下は走らない!」

と怒られたけれど、そんなのお構いなしで私はパソコン教室まで走った。


準備室の前に着き、少しだけ息を切らしながらドアをノックする。


「はい。」

相葉先生の声が聞こえたので、


「失礼します。」

と、私はドアを開けた。


「相葉先生!」


中に入ってすぐに相葉先生の姿を見つけると、私は勢いよく先生に声を掛けた。


「おぉ?」


相葉先生はタバコを吸いながら、血相を変えてやってきた私の方を振り向いた。


『一体、何事か』

そんな気持ちだったのかもしれない。


「先生、本当にどうもありがとう!合格できたのは先生のおかげ!」


私は満面の笑みで先生にお礼を言った。


“止めようにも止まらない”

そんな感じの笑顔だった。


そんな私に、

「おめでとう、本当に良かったな。河原が頑張ったから合格できたんだぞ。これからも頑張れ。」

そう言いながら、相葉先生が嬉しそうに笑ってくれた。



“合格して、相葉先生の喜びの笑顔が見たい”

その願いも叶えられた事が、ますます私を喜ばせた。


「次は2級かぁ。難しそうだなぁ。」

気が早いかもしれないけれど、既に私の気持ちは次に向かっていて、


「でも河原だったら頑張れば出来るんじゃないか?」

そんな相葉先生の言葉を聞いていると、不思議な程、本当に出来るような気がしてしまうのだった。


「うん!頑張るね!でも簿記も頑張らなくちゃ。」

そう言いながら私が困った表情をすると、私を見つめていた相葉先生は


「河原は頑張らなきゃいけない事がいっぱいだもんな。」

と、笑った。


ブラインド越しに窓から西日が差し込んでいたからだろうか。


相葉先生の笑顔が、とっても優しく、キラキラと輝いた気がした。
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