Only Three Months
SAVE
エドと一緒に帰ってきたものの、会話はせず。
話したがりなエドが、何も話さなかった。
付き合いが長いから、オレが話しかけても反応しないのを分かってたんだろう。

このもやもやした気持ちを晴らすには、日記しかない。
いつもの場所へいって、いつものように日記で整理しよう。


  ☆


そもそも交流会が始まったのが夕方だったから、もうすっかり陽は落ちて。
いつもはもっと早い時間に来るから、この時間に来るのは初めてかもしれない。

城を囲うように森が広がっていて、その中にオレの定位置がある。
もたれるのにちょうどいい木があって、
そこから空を見たり、今日みたいに日記を書いたり。

日記を開くけど、今日は時間が遅いせいでうっすらとしか見えない。
携帯の光で日記帳を照らす。

ペンを持って日付を書こうとしたとき、ドアが勢いよく開く音がした。


「…嫌、止めて、手を離して!」


夜の森に合わない大きな女性の声。
その言葉の内容が、何だか不穏。
携帯の光を消して、日記も片づけて、城からの音に耳を澄ます。


「黙りなさい、アリシア」
「嫌よ、離して!」
「誰に口答えをしているんだ!」


森中に広がる大声と、パチンッという音。
ビンタ…?

アリシアってことは、姫だよな…?
話してる相手は、国王か?


「姫様、落ち着いてください」
「落ち着いてなんてられないわ!」
「いつも通り、気持ちよくなろうとしているだけではありませんか」
「それが嫌なの、離して!!」


気持ちよくなることってなんだ?
姫は、何を嫌がってる?

城の中で、何が起こってる?


「聞き分けの悪い娘だ。
 王族の恥だぞ、分かっているのか!」
「なりたくてなったんじゃないわ!
 いいから手を離して!」


ドサッと音がした。
オレはまだ、動かない方がいい。
動いて物音でも立てたら、国王に気付かれる。


「望みをかなえてやったぞ。
 あの小娘があんな恰好で動けるわけがない。
 明日まで放置でいい。
 親に歯向かった罰だ」
「かしこまりました」


大声ではない声を聴くと、聞き慣れた声になった。
国王と、今日交流会に来ていた執事。
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