Only Three Months
ドアが閉まる音がして、一息ついてから動いた。
音からして、近くなのは間違いない。

誰がそこにいるのか、分かるけど、認めたくなかった。
明らかに、木々の枝でつけられただけではない乱れ方。
人の手で切られて引き裂かれたような、原型のないネグリジェ。


「…姫」


顔を隠していた髪を流して、表情を見る。
姫って、こんなに白いのか?
白いというか、すごく青白く見える。

姫が、ゆっくりと目を開けて。
オレの視線とは合わない。



「…だれ?」
「マイク、マイケル・リリー。
 今日庶民学校で一緒に踊った」


今日、たまたまオレがこの時間に散歩に来たから知ったこと。
いつもみたいに夕方だったら分からなかった城の内部。

オレの知らない王族の世界がある。
今日姫に会ってからずっと混乱してるけど、それだけははっきりしてる。


「…移動するよ」


姫の返事を待たずに、オレが着てきた上着をかぶせて抱き上げる。
思ったよりも、軽い。

不幸中の幸いは、移動中に誰にも会わなかったことだ。
時間が遅かったから、当然だけど。

姫を支えたまま家に入って、姫をゆっくりベットに下す。


「マイク…」
「横になってて。
 お湯取ってくる」


何があって、姫は城から落ちることになったのか。
聞きたいけど、姫の手当てが先だ。

洗面器にお湯を張って、タオルと一緒に持っていく。
クローゼットを開けて姫が着れるようなものを探してみる。
…スウェットくらいしかないな。
たぶん、大きいだろうけど、ないよりマシ。

背中を支えながら姫の身体を起こす。


「…脱げる?」
「うん…」


裂かれた服を脱ごうと動くたび、姫が顔をしかめる。
その表情を、見てられなかった。


「…じっとしてて」


もうこのネグリジェを着ることはない。
裂けてるところから、さらに裂く。

…姫の肌って、こんななのか。
なんで、こんな広範囲に痣ができてるんだよ。
切られたような出血の跡まであるし。
全て、ドレスで隠れるような場所に。

姫に、かける言葉が見つからない。
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