Only Three Months
「マイク、大丈夫?」


アリーが心配して、手を握ってくる。
1回意識すると、静めるのに時間がかかるんだ。


「ねぇ、マイク」
「ん」


その“姫”口調には勝てない。
自分の表情を気にする前に、顔をあげて目が合ってしまう。

アリーがぱっとと真っ赤になって、顔を逸らした。
手を握られる力が強くなる。


「アリー」
「はい」


顔を逸らしたままの返事。

…そんな顔するなよ。
収まるものも収まらなくなる。


「オレ以外のヤツに、絶対聞くなよ。
 遊ぶって何するの、って、絶対聞くな」
「…うん」


真っ赤なまま返事をするアリー。
本当に、庶民学校でやっていけるのだろうか。


「遊ぼうって言われても、ついて行かないで」
「うん」


手の力が緩まって、アリーがオレに向き直る。
オレが顔をそらそうとすると、アリーの手で戻されて。


「…っ」
「マイク」


じっとのぞいてくるその目に耐えられない。
顔をアリーの両手で固定されて。
逃げる術は、目を閉じるのみ。


…唇にあったかくて柔らかい感触。
ハッと思ったときには、アリーがオレの下にいて。


「…ごめん」


退けようとしたけど、アリーがオレを引っ張って。
そのままアリーに倒れこむ。


「もうちょっと、こうしてたい」


アリーの腕がオレの身体を離さない。
この妙な安心感は何だろう。
邪念が消えていく。

人の温かさで安心を得たことはないかもしれない。
オレも、たぶんアリーも。
なぜか、すごくあったかくて、ほっとして。


「…マイク」
「ん?」
「嫌だった? さっきの」


答えに困る質問。
嫌と答えれば嘘だけど。


「…急すぎ」
「ごめんなさい」


口では謝ってるけど、笑ってる顔が想像できる。
嫌なら嫌って答えるの、アリーも分かってる。


「私、ちゃんと聞くから。
 マイクに何があったのか、全部聞かせて」
「ああ」


アリーがオレを押して、わざわざ顔を見て言った。
もう互いの目を見れないことはなくて。

ご飯を作って食べながら、シャワーを浴びながら。
どう話そうかを考えた。
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