ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「無責任だよ……」
ついに涙が溢れてしまった。想史が優しすぎて、つらい。
『わかってるよ。俺が無力なことくらい。信用できないんだろ。でも穂香がいる。おじさんもおばさんもいる』
違うよ、そんなことない。想史が好きすぎて、つらいんだよ。みんなが好きだから、でも負担になりたくなくて、“愛して”って言えなくてつらいんだよ。
ぽろぽろと涙が零れて、携帯の画面に落ちた。
ああ、私、朔がいなければいいのになんて思うんじゃなかった。それは私の本心じゃなかった。
ただ、愛されたかった。誰かに、“瑠奈が一番好きだよ”って言ってほしかっただけなんだ。
震える肩を、隣の想史が抱きしめてくれる。
「なあ、俺全然状況が見えないんだけど。これってもしかして夢かな。朔って、夢の中のお前のお兄ちゃんのことだろ?」
軽い口調とは対照に、難しい顔をしている想史。わけがわからないながらも、なんとか自分の中で状況を整理しようとしているみたい。
『瑠奈? 誰か近くにいるのか?』
「はい、俺想史って言います。瑠奈の彼氏です」
こっちの想史があっちの想史に勝手に返事をしてしまった。ビックリするけど、もう遅い。
『は? ふざけんなよ。俺が想史だ。勝手にモノマネすんじゃねえ!』