ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
「俺に告白した今の瑠奈と元々の瑠奈は、よく見ると目が全然違う。今の瑠奈はいつもすごく寂しそうで。元々の瑠奈は、穏やかでのんびりしてるんだ」
そうなんだ……。
「今の瑠奈も好きだよ。大事にすればするだけ、すごく嬉しそうな顔をしてくれる。お前が満たされた顔をするの、もっと見たかった」
「想史……」
「でも、元のところに帰らなきゃな。あっちの俺……我ながら頼りないしちょっとムカつくんだけど、あっちの俺も待ってるだろうから」
想史は、もともとこの世界にいた瑠奈と私が別の人間だって気づいてたんだ。それぐらい、どっちの私も真剣に見つめてくれていた。そのことが嬉しくて、涙が出そうになる。けど、泣いている場合じゃない。雨はだんだん小降りになってきている。
「想史、穂香。なんとか帰るから、朔にそう伝えて!」
『わかった。信じて待ってる』
想史の返事を聞くと、通話を切ろうとして少し迷った。奇跡的に通じている違う世界どうしの電話。これを一度切ってしまったら、二度と通じないような気がして。
躊躇したけど、結局通話を終了した。きっと大丈夫。なんとかなる。
「よし、行くか」
「うん」
「……えっと、どうやって帰るんだ?」
何でもわかっているようで、やっぱりわかっていない想史が首をかしげる。