ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜


公園に向かう間、雨はだんだんとやんできた。さっきまでの嵐が嘘みたいに穏やかになっていく。風はまだ少し強くて、ポニーテールにした髪を揺らす。

向かい風に向かって走り、やっと公園にたどり着いて、すべり台に昇ろうとして絶句した。


「ああ……っ!」


思わず悲鳴に似た声が出る。なんと、目の前にあるはずだったすべり台が焼け焦げたように真っ黒になっていた。そして真横に倒れてしまっている。下の土がえぐれていた。


「まさか、さっきの雷にやられたのか? 近いとは思ったけど」


そんなまさか。雷がこのすべり台にピンポイントで落ちるなんて、なんという偶然。なんという不運。普通、こんなことないよね?


「あー君たち、近づいちゃいかんよ! 危ないからね!」


駐車場に止まった消防車から消防隊員が出てきて私たちをすべり台から遠ざける。そしてあっという間に『立入禁止』という札とロープですべり台の周りをぐるりと囲んでしまった。


「そんな……」


膝から力が抜け、その場に崩れ落ちる。あのすべり台がなければ、どうやって帰ればいいの。


「脱力してる場合じゃないだろ。あのすべり台がないとダメなのか?」


想史に腕を引かれて立たされる。私はあのすべり台の頂上から二つの月を見て、二つの世界を行き来していたことを話した。


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