ぜんぶ抱きしめて。〜双子の月とキミ〜
『楽しかった?』
『いや、むしろ違和感しかなかったね。無駄にお前のこと探し回って、超疲れた。ほっときゃいいのにな。どこかにお前がいるんじゃないかって、探して探して。走り回ってたら、お前を見つけたような気がした』
『へえ……』
『だけど、結局会えなかったんだよ。お前を見つけたと思った瞬間、川に落ちたんだ。あ、俺死んだなと。変だけど、夢の中で覚悟した。そこで目が覚めた』
川に落ちた瞬間、目が覚めた。朔はそう言っていた。
「川……」
ぽつりと呟くと、空を見上げていた想史がこちらを振り向く気配がした。
朔が見た夢も、元の世界とそっくりの世界の夢だと言っていた。ということは、このあたりと地形も一緒ってことだよね。
近くにある川を思い浮かべる。この辺は田舎だから、思いつくだけでも三本くらいある。通っていた中学校と保育園の近くそれぞれ一本ずつ。そして。
「コスモス畑の、あの川」
保育園の遠足で行って、朔が落ちたあの川。幼いながらに『死にかけた、天国に行きかけた』って泣いて泣いて……。
「もしかして、あいつ」
あのときも、一瞬だけど異世界に行きかけたのかな? あの魂がさまよう白い空間を見たら、天国だと思っても無理はない。何も知らない小さな子なら、特に。