難攻不落な彼に口説かれたら
優しく声をかけて席を立つと、小野寺君はムクッと眠そうな顔を上げて呟いた。

「ほんと雪乃先輩って……お人好しっていうか……甘いよ」

その言葉にどこか不穏な響きを感じたのは気のせいだろうか?

それから午前中はいつものように仕事をしていた。

午後は経営企画室のみんなは打合せや客先に行って出払ってて、オフィスには私ひとり。

郵便物の仕分けをしていると、小野寺君が総務との打合せから戻って来た。

「雪乃先輩、総務がうちのパンフあと百部欲しいって言ってるんですけど、在庫どこにありましたっけ?」

小野寺君は周囲の棚を見て回る。

「ああ、ごめん。場所取るから、資料室に先週移したの。取ってくるね」

ドアの横のフックから資料室の鍵を取ると、資料室に向かった。
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