難攻不落な彼に口説かれたら
鍵を開けて中に入る。

資料室の中は棚が五つ並んでいて、データ化されていない過去の資料も置いてある。

「この辺の資料も時間がある時に整理しないとね」

奥に進んでカタログの包みを見つけたその時だった。

「電気もつけずに危ないですよ、雪乃先輩」

小野寺君の声が突然耳に届いて、ビクッとした。

「あっ、ごめん。すぐ出るから大丈夫」

カタログの包むを胸に抱えて資料室を出ようとすると、入り口にいた小野寺君がバタンとドアを閉めた。

「せっかくだから楽しみましょうよ」

小野寺君がニヤリと口角を上げる。

彼がそんな風にどこか邪悪な笑みを浮かべるのを初めて見た。

すごく嫌な空気を感じる。

〝マズイ。逃げろ〟って頭の中で声がするが、この状況じゃ逃げられない。

「……た、楽しむってここにはそんな楽しいものはないよ」
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