難攻不落な彼に口説かれたら
最寄駅に着くと、電車を降りて、改札口に向かうために階段を下りた。

「……いなくなればいいのよ」

若い女性の声が背後で聞こえたかと思ったら、ドンと背中を押された。

「キャッ!」

階段の段差が目の前に迫るも、傘を持っていて手をつくのが遅れた。

ズキンと額と足首に痛みが走る。

でも、階段でじっとしてるわけにはいかなくて、顔をしかめながら起き上がった。

「雪乃ちゃん!」

振り返れば、美鈴さんが少し青ざめた顔で私を見て、私の身体を支えた。

「美鈴さん……」

「雪乃ちゃん、大丈夫なの?」

「ははは……無様に転んじゃいました」

笑いがこみ上げてくるのはなぜだろう?

感覚が麻痺しているのだろうか?

「雪乃ちゃん……誰かに押されたんじゃない?反対側に走ってくマスクした女の人見たわよ」
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