例えば君に恋しても
それを聞いて峯岸さんはくすくす肩を震わせながら笑う。
「綾瀬さんは本当の仁様を知らないでしょうね。
仁様は人一倍努力家なんですよ。
特に兄弟の中では一番の努力家です。」
「本気で言ってます?」
思わず口をついた言葉にらまずかったかな。なんて思い、咳払いをして誤魔化すと峯岸さんはまた、笑う。
「いいんですよ。
仁様は誤解を招く態度をわざとされてるんですから、
特に人間関係では、気に入った相手には尚更そんな態度になるんです。」
「普通・・・逆ですよね?」
「ええ、普通はね。
仁様は極端に自己肯定感の低いお方です。
だから、気に入った相手には嫌われる前に自分から突っぱねる。
それなのに、本当は嫌われたくないんです。」
・・・ややこしい性格だ。
「仁がそんな風になったのはやっぱり育った環境なんですか?」
「当主の事を悪く言うことは私にはできませんが、仁様はいつも新一様をを追いかけていましたね。
努力しても努力しても、新一様のようにはなれない。
新一様のようにご両親に認めてもらいたかったのかもしれない。
だから更に努力をしますが、結局は誰にも届かない。なんて・・・
まだ仁様が小学生くらいの頃でしょうか。
そんな事を仰ってました。」
「・・・そう、なんですね。」
てか、仁の小学生の頃にはもう峯岸さんは執事だったわけ?
どう見てもまだ30代・・・