例えば君に恋しても
「ここ、あなたの家?よね・・・⁉
どうしてっ⁉」
戸惑い、慌てる私を何も言わずにリビングに連れて行くと、そこのベランダから見える景色を私に見せて指をさす。
訳もわからず、彼の指先を見つめたそこに見えたのは、あの遊歩道だ。
「あのあと、君、全く来ないからさ。
でも、婚約者に裏切られて困ってるなら助けてあげたいと思ったから、いつでも君を見つけられるように、あのあと直ぐにこの部屋を借りたんだ。」
「へっ?えっ?・・・全く意味が分からないんですけど?」
知り合いでもないよね?私達・・・
「この間の借りを返したくて。
あの100円、本当は君のだろ?」
「えっ?100・・・?」
まさか
あの
たかだか100円のために
この新築マンションを借りてまで、私を助けようとした?
・・・現実離れし過ぎでしょ?
「ごめんなさい。本当に意味が分からない。
てか、あなた一体何者?」
その若さで都心部に近いこの新築マンションを人助け目的で借りるなんて・・・
すると、不思議そうな表情で首を傾げた彼は、改めてもう一度私に名刺を差し出した。
よく分からずに受け取った名刺を見た瞬間、開いた口の塞ぎかたさえ分からずに、何度も名刺と彼を交互に見つめた。