例えば君に恋しても
お昼近く
着たこともないドレスを用意して仁が迎えに来てくれた。
「急なパーティーだけど、招待客は数えきれないほどいるから、俺の側にいてくれるなら美織一人くらい紛れてても全然平気そう。」
パーティーに向かう車内で
不安を和らげようとしてくれてるのがよく分かる。
「でも、やっぱり白にして良かった。美織はふわふわそうなイメージだから、白が似合うと思ったんだ。」
白のミニ丈ドレス。
私なんかが袖を通してはいけなさそうなほど、高級感が漂っている。
「仁なら、黒を用意してくれると思ってた」
悪戯に笑う私に首を傾げる彼。
「だって、仁には私が蟻に見えてるんでしょ?」
「あれはっ、あれこそ冗談だろ!冗談も通じないのかよ。」と慌てて誤魔化しているけれど、あの時の仁に常識なんか一つもなかったはずだ。
100%本音だったでしょ。
口を尖らせると
くすくす運転席から笑い声が聞こえてくる。
「笑うな峯岸!!」
冗談混じりに怒る仁。でも、そんな仁のほうが、尖ってるよりも何倍も素敵だ。
都心の一画に
広大な敷地
大きな屋敷が遠目に見える。
あれが市橋財閥の本家。
まだ一度も足を踏み入れたことのない聖域。
と、いうか本来なら人生で一度も踏み入れる予定のなかった場所。