例えば君に恋しても
「ただの興味本意で私に声をかけたわけ?」
ポットで沸かしたお湯でインスタントのコーヒーを作る様子を不思議そうに眺める仁。
きっとこのような金持ちはメイドが淹れてくれた珈琲を当たり前のように飲んでるんだろうから、ポットの使い方さえ知らなさそうだ。
これは、ただの私の偏見だけどね。
「で、私が貴方達兄弟にとって、特別、無関係であることは理解してくれたの?」
インスタントのコーヒーをすすりながら、うんうん。とうなずく彼は、一口飲む毎に小さな声で「不味い」と呟く。
同じように育ったはずの兄弟でも性格は全く違うもんなんだなと、この非常識極まりない男を見ていると心底思う。
仁は偏見通りのお金持ちの坊っちゃんのようだ。
「で?君は兄貴のなんでもないんだよね?」
「何度も言わせないで」
「就職先が見つかるまでここに住んでるだけなんでしょ?」
「そうよ。」
「じゃあ、やっぱりうちで働きなよ。」
「えっ?」
「丁度、今、人手が足りないんだ。」
「そんな簡単に・・・」
「簡単な仕事だから大丈夫」
彼もまた、笑顔だけは新一さんに似て、人懐っこく笑うと
私を外へと連れ出した。