例えば君に恋しても
それが嬉しいのに
また、数日、会えなくなるかと思うと淋しくて
食事をしている彼の姿をただ静かに見ていた。
よっぽど淋しい表情でもしていたのかな。
そんな私を見て
「どうした?」
思いでの中の瑛士さんの声と、仁の声が重なって、驚いて振り返ると
彼もまた、そんな私を見て、一瞬だけど目を丸くした。
「なんでもない。スーツとかよくわかんないなって悩んでただけ。」
「・・・あ、そ。別にそれでいいよ。」
私の手からスーツを受け取った彼はただ、静かに私の目を見つめてる。
何を考えてるのか分からない漆黒の瞳には目の前にいるはずの私さえ映してないようにも見えた。
「な、なによ?」
「いや、着替えたいんだけど、出てかないから、俺の着替えを見たいのかなー。って考えてた。」
その言葉にハッとした私は、慌てて部屋を飛び出した。
「着替えたらリビングに連れてこいって言われてるから早くしてよね!!」
ドア越しに叫んだ私の声に返事はなく
まるで一人言のように広い家の中に響きながら消えていく。
どこにいても
何をしていても
いつもあの人のことばかり思い出してしまう。
きっと
あのスーツを着た仁を見て
私はまた
瑛士さんの影に、胸が張り裂けそうになるに違いない。