例えば君に恋しても


そして一日の中で一番の幸せタイム。


夜11時、携帯の時計を見ながらベッドの中で瑛士さんからの電話を待っていると、ようやく彼の名前が携帯の画面に浮かび、私を呼んだ。

早く早く声が聞きたいけど、あなたからの電話を待ちわびてたなんて知られたくなくて、わざと数秒待ってから通話ボタンを押した。


「もしもし?瑛士さん?今仕事終わったの?」

「ああ・・・」

いつもだったら、明るい声で今日は何してたの?なんて聞くくせに、今日の瑛士さんの声はどんよりと曇っていた。

「・・・何か仕事でトラブルでもあった?」


すると、暫くの沈黙の後でようやく彼は「何でもない」と一言だけ呟く。

何もないわけない。

こんなにも落ち込んでる彼の声を聞いたのは初めてだ。


「大丈夫?・・・私は瑛士さんの婚約者よ?信じて相談してくれると嬉しいわ。

それとも、明日帰ってから聞いたほうがいいかしら?」


恋人として、婚約者として、半年後の妻として、
彼に頼られたい。

彼の弱々しい声は私の母性をくすぐるように小さな声で頷く。


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