例えば君に恋しても
ようやく、ほんの僅かでも光が見えそうだった私の未来が
ほんの一瞬でまた、真っ暗闇に突き落とされたように
視界が遮られた。
頭が働かない。
叫びたいほど
今すぐ駆け出して、人違いだと確信したいのに
体は石になってしまったように動かない。
ピーッピーッ
背後で鳴る洗濯機のお知らせ音。
それが聞こえたのか、隼人が数枚の衣服を持って部屋から出てきた。
「あれ?綾瀬さん?洗濯終わったんじゃないの?」
何も知らない彼に
取り繕うこともできない。
頭の中にエンドレスで流れる思い出の中の瑛士さんの表情。
涙が溢れて
こぼれ落ちていく。
「綾瀬・・・さん?」
突然泣き出した私に、隼人は驚きながら周りを見渡した。
「どうしたの⁉俺、なんか気に障るようなこと言った⁉」
驚いて、持っていた洗濯物を床に落として慌てふためく隼人に、首を横に振って見せるのが精一杯だった。
「なんでもない・・・なんでもないから・・・」
記憶から抹消したいくらい憎くて愛しい忘れられない人がいる。
その彼の面影がどうしても私に付きまとう。
前をむくのを阻むように暗闇からそっと手招きしてる。
私を騙した最愛の彼。
それが、絢香の恋人かもしれないだなんて
信じられる?