例えば君に恋しても
「それで?」
「うん。最初美織ちゃんに会った時からピンときてたんだけど・・・
調べてみて納得した。
君、やっぱり犬だ。」
「はっ?犬⁉」
「うん。色々コミュニケーションの取りかたとかも調べてたんだけど・・・」
何を考えているのかこの人は・・・っ
呆れを感じた時、先程新一さんが読んでいた本が目に留まった。
難しい経済学の本の表紙が少しだけずれている・・・。
昔、学校の教室で、つまらない授業を受けてるときの男子がたまに、参考書の表紙とすり替えて漫画を読んでいた子達の事を不意に思い出して、嫌な予感が走った。
まさか
成人して
一つの会社を任されてる大人の男性が仕事中に中坊、みたいな真似はしないだろうと思いつつも
机に置いてあった、経済学の本をさっと手に取り中を開くと
見えたのは犬のカラー写真。
「初めての小犬入門編」
「あなた、仕事中に何を見てるんですか・・・?」
「えっ⁉ちょっ、勝手に他人の本を見たらダメだよ」
「ダメだよ。じゃないっ・・・まさかこれを参考に私とのコミュニケーションの取り方を考えてたなんて言ったら、怒るよ?」
膝の上で暴れる私を後ろから抑えるように抱き締めながら言い訳を始める彼の声は少し、困ってるようにも、慌ててるようにも、喜んでいるようにも聞こえる。