キラキラmemoriy




「何が面白いのかわかんねーけど……笑うことはいいことだ。」

先生が切り出したのは、自己紹介からではなかった。

何かホッとしたような顔をして、届人を見る。
それに気づいた届人は、視線を窓の外に向けた。

「じゃぁ、俺の自己紹介からだな。」

先生は、黒板に文字を書いた。
静かな教室に、チョークの音が響く。

「俺の名前は、梶 裕也(かじ ひろや)」

梶先生。
入学式前から梶先生にお話を聞いてたけど、やっぱり学校って緊張する。
すごいキラキラで、ワクワクして……

友逢は少し嬉しそうに先生を見た。

「梶先生って呼ばれることが多いかな。あとはー、裕先生とか。まぁ自由に読んで。担当は数学。お前らの数学見るからなー。まぁでも基本、なんでもできるから質問あったら来い。世界史以外なら教えてやる。」

黒板に持たれて話す先生。
相変わらず、顔も声もイケメンでモテるのだが、この態度が気に食わないやつは大勢いる。

「そんくらいでいいか。じゃぁ俺が適当に名前呼ぶから、席たって質問答えろよー」

そんな自己紹介ありなのか!?
そう思ったのは、クラスのほぼ全員だろう。
普通なら出席番号順に自由に話すはずだ。
名前、出身校、部活……と簡単なプロフィールを、言うはずだ…

こいつに、いったい何を質問されるんだ!?

「じゃぁ、届人からー」
「またかよ……」

届人は嫌々ながらも、席を立つ

「名前とニックネームと出身校」
「咲籠届人です。宮野中出身です。ニックネーム…ニックネーム?!はー…えっと…中学では咲くんとか籠くんとか言われてました。」

意外と、普通な質問に届人はホッと胸をなでおろす。

「じゃぁ一言」
「よろしくお願いします」

「じゃぁ、次、祐信」
「うぃす」

届人の斜め前の席、友逢の隣の席に座っている祐信。

祐信はゆっくり席を立つ。
背の高さに、誰もが顔をあげた。

「名前とニックネーム、それから好きな食べ物」
「熊谷祐信です。熊って呼ばれます。好きな食べ物はおにぎりです。」
「次はー、友逢」
「は、はい!!」

ビクッと方肩を揺らし、友逢が席を立った。

「名前とニックネーム、誕生日」
「グレーシャ・ディスティニー・友逢であう!!みんなに、ゆーあって呼ばれてました!誕生日はクリスマスイブです」

満足気に席を座った友逢。
明るい声、ハキハキした態度に緊張していた空気が軽くなった気がした。



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