甘え下手の『・・・』
そう言って筧くんは私の肩を抱いたまま今井さんの横を通りすぎる。

「筧主任!」

叫ぶ今井さんを振り返りもせずにエントランスを抜ける。

「かっ。筧くん」

肩を抱かれて押されるように歩かされているので私も振り返ることができないのだが、今井さんはどんな顔をしているのだろう。

「筧くん、いいの?」

「いいの?の意味がわからない」

前を向きながら答える筧くん。

「だって、あの子…」

赤信号で止まった筧くんはようやく私の肩から手を離し私を見た。

「オレは今日お前とメシにいく。それを楽しみにしていた。邪魔はされたくない。…それだけだ」

真っ直ぐに見つめられ、その上ストレートな言葉。顔が赤くなるのがわかった。

「…楽しみにしてたんだ~?」

ごまかすために、筧くんをからかうように言ってみたら

「かなりな。…お前は?」

またストレートなお返事と質問にどう答えていいのか焦ってしまう。

「…楽しみだったよ…」

呟きのような小さな声はちゃんと筧くんに届いたようで満足そうに笑っていた。

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