君の向こうのココロ
僕は一冊手に取り、内容を確認しようとして、ふと周りを見回す。




た、立ち読みご遠慮くださいって壁や本棚に書いてあるけど…




小心者もあるのかお人好しなのか、とても気になるけど…




ごめんなさい…




立ち読まさせていただくっす。




読まなきゃわからないもんね。



しばらくじっと本に食い入る。



集中すると時間の経つのは早いもの、結構しっかり読み始め没頭していると…




後ろに人の気配を感じた…。




その気配は視界の左の隅っこで店員さんっぽく本の整理をしている。



やっぱ立ち読みはダメっすよね~。



そしてついに



声が掛かった。



「あの~?」



僕はぎくっとして振り返る。




でもとても聞き覚えのある声。




透き通る優しい声に僕の耳はすぐにわかった。



たった今僕の会いたい人の声。



「立ち読みはだめですけど。お客様~。」



僕はそっと振り返った。



やっぱ彼女だ。


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