【完】螺旋のように想いを告げて
『亮ちゃん!』
可愛らしい声で呼ぶ幼なじみはもういない。
咲良は思い出を失ったんだ。代償として、俺に話しかけてくれたあの日の思い出を。
迎えが来なくて不貞腐れて、雨の中にいた俺に話しかけてくれた咲良。初めて、俺を"亮ちゃん"って呼んでくれた。
咲良にとって一番の思い出を俺なんかのために……。
「亮! 朝ごはん!!」
だから、告白した日から"亮ちゃん"と呼ぶことはなくなった。
それはとても悲しいことで、夢に見るほど求めることだってある。
「もう、二度寝禁止だってば!」
それでも思うんだ。
あの日に代償として咲良は思い出を奪われたけど、俺はそれが悪いことだと思わない。