Dance in the rain
彼女は、凄かった。
彼女が踊り始めて数秒と立たず、あたしは小さな音がすぐそばで聞こえることに気づいた。
カタカタカタ……
あたしの歯が、打ち鳴らす音だった。
彼女が、舞台を支配してた。
その空間を。時間を。人を。
圧倒的な存在感、技術力、表現力。
でも、それだけじゃない。
まだまだこんなもんじゃない、伸びしろって言うのかな。
底知れないブラックホールを覗き込んでしまったみたいな踊りに、戦慄した。
こんな風に舞いたかった。
こんな風に飛びたかった。
彼女の踊りは、あたしの理想そのものだった。
その時、気づいたの。
彼女が、彼女こそが、天才っていうんだって。
神様に愛された、ほんの一握りの才能ある人たち。
そしてそこに、あたしは入っていないんだって。