Dance in the rain

戻ってきた女性スタッフが携帯用の裁縫セットを差し出すと。
翔也は、中から小さなハサミを取り出して、
そしていきなり……
ドレスのオーガンジーをザクザク切り出したんだ。


「ちょちょ……ちょっと翔也! それって、ちょっとやばいんじゃ……」
あたしは青くなって止めたけど、翔也の手には微塵のためらいもない。

まるで見えない線をたどっていくみたいに、
布の上に、綺麗なラインを描いていく。

美央ちゃんは、何が起こるのか、今やわくわくしながら翔也の手元を見つめていた。


ついにぱっくり切り取ってしまうと、
それを、さらに細かく幾筋も切り離してから、3本まとめて三つ編みに。
そうしてから、リボン状に結んでいく。

次に、針と糸とを取り出して。
花を植えるみたいに、リボンをドレスに縫い付け始めた。

針が、糸が、まるで自分で考えて、動いてるみたい。
正確に、一瞬も止まることなく動いていく。

一つリボンがつくたび、「へえ」って、事務所のスタッフさんたちが集まってきて。
ギャラリーが増えていく。
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