Dance in the rain
12. サイクロン
いつもの帰り道。
いつもの公園。
いつもの噴水。

でも……あたしたちの距離は、いつもと違っていた。
一歩分、あたしは翔也の後ろを歩いてる。

どんな顔を、合わせていいかわからなかったから。
どんな言葉を、伝えればいいかわからなかったから。

コツ……

噴水の脇で、翔也が立ち止まった。

あたしも、足を止める。


「……聞きたいことあるなら、早く聞けよ」
苛立ちをにじませて、翔也が突き放す。

「…………」

黙ったままのあたしに焦れたらしい翔也が、振り向いた。

「昨夜の、あの人は」
「知ってる」
叫ぶように、遮った。
「潤子さん、今日“雨音”に来たの」

「……やっぱりそうか」
あきらめたみたいなため息とともに、翔也が独りごちる。
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