Dance in the rain
——向こうのオートクチュール工房から、うちで勉強してみないかって話がきてるんだけど、翔也がどうしても首を縦に振らないのよ。こんなチャンスめったにないっていうのに。
——あの子は、自分で自分の才能から目を背けようとしてるの。
「行けばいいじゃん。あたしのことなら、心配しなくても大丈夫。また野良猫に戻って新しいご主人様見つけるから」
わずかな温度も感じられない、なんて自虐的なセリフ。
こんなこと、言いたくない……言いたくないのに。
情けなくなりながら視線をさまよわせると。
翔也の目とぶつかった。
何か言いたそうに、あたしを見つめてる。
大好きな人。初めて本気で好きになった人。
でもその人は、あたしとは違う世界の人だった。
神様に愛された、選ばれた人だった。
唇をギュッて噛んで、四方八方、飛び散りそうになる感情を必死で抑え込む。
でも。ダメだ……無理だよ。
耐え切れなくなって、あたしは。
「さっさと行っちゃえ!」
バッて翔也の腕を払うと、駆けだした。
「花梨っ!!」