Dance in the rain

走って走って走って。

いっそ見事ってくらい、ド派手にスッ転んだ。
「ったぁ……」

最悪だ……。

気が付くとそこは、居酒屋が並ぶ高架下。

——ちょっと何あの子、泥だらけ。
——泣いてんじゃない? なんかミジメ〜失恋かな。
——俺が慰めてやろうかなぁ。あはははは……

サラリーマンやOL、よっぱらいのオヤジが、あたしをジロジロ眺めていく。

いつかの夜と同じ。
でも、もう翔也は助けてくれない。

ズルズルって、重たい手足を引きずるみたいに立ち上がる。
追い越していくスーツ姿の女性が、潤子さんに重なった。

——事務所の社長として、いいんですか? パリに行くってことは、モデルをやめるってことでしょう?

——いいわけないわよ。かなりの痛手ね。

——なら……どうして?

あたしが聞くと、潤子さんは少し表情を曇らせ、あたしから目をそらした。
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