Dance in the rain
——2年前のことよ。彼がコンペに出したものとまったく同じデザインを、あるデザイナーが、数日前に自分のコレクションで発表していたことがわかってね。
——実力どうの、というより、そのデザイナーが、もともと周りを味方につけるのがうまい人だったのよね。誰も翔也の言い分を信じなかった。当時彼がつきあっていた恋人すら、ね。
——そして彼は……生み出すことをやめた。本名の『如月翔也』を名乗ることもなくなったわ。ネットで検索すれば、何があったか、すぐにわかってしまうから。
「オレはもう……作れない」
カラになったペットボトルをゴミ箱に投げ入れて、吐き捨てるみたいに言う。
「あんだけ人のこと天才だの神だのヨイショしてた連中が、手のひら返すみたいに白い目で見るんだぜ。くだらねえって思ったよ。今まで血反吐吐くみたいに築いてきたもん、一体なんだったんだよってな」
そして、目を上げた。暗く濁った光を宿した、目を。
「オレと同じだと思った。初めてお前を“雨音”で見た時」
「え?」
「疲れ切ってズタボロで、周り全部が敵って目で睨んで……。2年前のオレと同じだって。だから放っておけなかった。教えてやりたかった。お前に」