Dance in the rain
13. 蜃気楼の向こう側
チリチリッ!

ものすごい勢いでドアが開いて、ドアベルがちぎれそうなくらいぐるんぐるん回転して、悲鳴をあげた。

「花梨ッ!」

店内のざわめきを貫いて。
咎めるような鋭い声がして、あたしはびくっと体を強張らせた。
足音が、迷うことなく近づいてくる。
そして。
有無を言わせない力で腕をつかまれて、あたしは翔也を仰ぎ見た。

「翔也、お客さん……いるから」
「なんで出ていくんだよ? そばにいろっつったよな?」


完全に怒りまくってる翔也に、あたしは
用意していた言葉を必死になって探した。

でも。頭は真っ白——
どうしようっ……

その時。
あたしの手の中のお盆がひょいって取り上げられて。

振り返ると、純さんがにこっと微笑んでいた。
「ここじゃ話しづらいだろ。裏で話してきたら? でも、ちょっとだけだよ。彼女がいないと、困るからね」

最後のセリフを、翔也に向かって言うと。
あたしを‘スタッフオンリー’のドアへ促した。
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