Dance in the rain
ドアを押し開けると、ムワッて熱気が体にまとわりついた。
べたつく不快な空気をかきわけるようにして裏の路地に出て、あたしたちは向き合う。
「一緒にパリに来いっつったよな」
殺しきれない感情を持て余すみたいに、その目がきつくあたしを睨んでいた。
「む、難しいらしいよ」
「は?」
「検疫。ペットを海外に連れてくのってね、検査したり予防接種したり申請出したり、時間もお金もかかるんだって。あたし繊細だから、そんなストレス耐えられな」
「はぐらかしてんじゃねえよっ!」
ダンッ!
翔也のこぶしが、段ボールに叩き付けられる。
あたしはきゅっと、唇を引き結んだ。
胸が、痛い。
あたしも、そばにいたいよ。
ずっと一緒にいたい……けど。
ダメなんだってば。